秋の川へ、キングに逢いに。
秋ですね~。
カナダの秋といえばここオンタリオ州では、燃えるように紅く染まる楓の紅葉ですよね。
。。。
それよりもそれよりも、ここできっぱりと宣言しますが オンタリオの秋で最も重要なのはキングサーモンの遡上ですっ!!
この時期、五大湖で大きく育ったキングサーモンが産卵のため流入河川を遡上して、トロントなど大都市近郊の川でもその遡上する姿を目にすることができるのです!
そして、その遡上してくるキングサーモンを川で待ち構え、釣り上げるのがオンタリオの釣り人の秋のビッグイベント!
残暑の厳しい今年、8月の末には既にオンタリオ湖から遡ってきているキングを川で確認してまして、9月の初めには、オンタリオ湖からの流入河川でキングを釣り上げ、初秋の挨拶は既にすませてたんですが、、、
今回(9月11日)は、この夏のフィールドリサーチ時に、偶然が重なって見つけた素晴らしい場所へ。
そこは、この時期大量にキングサーモンが遡上してくるオンタリオ湖への流入河川ではなく、 ヒューロン湖への流入河川の支流、しかも最上流域!
この夏のフィールドリサーチ時に、ヒューロン湖まで50キロ以上もあるこのエリアまでも遡上してくるキングたちがいると聞いていた場所。
でもなんで最上流域?
って、それは想像してみてくださいな。
日本の渓流域のような水の流れの美しい景観の中、
水の流れる音しか聞こえない、ほぼ誰もいない渓の中で、
1メートルを超えるキングと一対一の出逢い。。。
河口部や下流域は、餌釣り人が多くて、最近は漁夫の利タイプの傍観者が多いのも 上流域を選ぶ理由のひとつ。
沢へ降りる小径へと繋がる道路の脇に車を停めて、まずは道の横の土手を登って見下ろすと、、、
そこは既にカナダの大自然!
幾層にも重なった悠久の地層を削り取りながら蛇行するワンダーランドへの入り口。
川の中を遡行できるようにウェーダーパンツを履いて、ザブザブと入渓。。。
ウェーダー越しに伝わる川の水の冷たさが心地よく
先行者に聞くとやはりまだここまで遡上してきているのは僅か、、、
彼らは諦め、下流へと移動するとのこと。
ではでは、釣れなくてもこの景観の中で水に浸かりながら歩けるのがシンプルに嬉しいので、
ザブサブと渓の奥へ奥へ。
2、3キロ歩いて、途中ポツポツとキングの魚影が確認できたプールが2つほど。。。
と、かなりのシブい状況で諦めかけた時に
7匹ほどの魚影が確認できるプールを発見っ!!
このプールで粘ることにして、水筒の珈琲をちびちびとやりながらエッグフライをキングの鼻先と思しき場所へ流し続けていると、、、
全く釣れず。。。
(↑巨大な魚影がいくつか、、、見えますか?)
さらに粘り続けていると、ようやっと夕まずめに、プールから出て、瀬を遡り出す魚が出てきたので、すかさず追いかけて、フライを流す。。。
なんどもしつこく流す、、、
ほどなくして、、、
視認していたフライが、一瞬消えて、
重い間、、
次の瞬間、水面がドカンッと小爆発っ!!
水面が割れるとかではなくて、潜る水深の無い浅瀬でキングのパワーは横へと激しくスライドしながら、小爆発の大暴走!
同時に、ドラグが一切ついていない粗末なラチェットのみのシンプルなフライリールは
リールノブごとホイールが一気に逆回転!! 暴力的なほどの勢いでギュギューんと回るホイールに指でブレーキをかけながら、
同時に沢の中を、キングの進行方向へ向かって駆ける!
この瞬間、頭の中でも大爆発が起こっていて、 周りの景色や沢の水の抵抗、糸で繋がっているキングとの距離感なんかも無くなって、全体が溶けてひとつになってるような感覚。
そこから、意識がだんだん現実と繋がって、糸が切れないように魚の進行方向をコントロールしようとまた懸命に沢を移動して、バッキングラインまで出てるリールを巻きながら、ランディング・ネット(こんなサイズをキャッチできるサイズのネットはまず携行できない。)を使わずランディングするためにランディングポイントを探す。
さすが遡ってきたばかりのフレッシュラン、もの凄いパワーと勢いっ!
巻いて出て、巻いて出てと30分ほどもかかり。
ドラグなど、間接的な衝撃吸収機構なしでの一対一でのキングとのやり取りは、ラインブレイクやバラシなどの懸念と戦いながらも終わってほしくないような、長く、時間軸がおかしくなったような不均衡な至福の時間。。。
余分なギアや小手先の仕掛けなく、シンプルでダイレクトな糸電話。指や手のひらでキングの呼吸を感じつつな触感ブレーキが掛け値なしの濃密な時間を創る、、、
畏敬の念を感じずにはいられないカムイチェプ(神の魚)と対峙する感覚。。。 なんとか、ランディングできそうな場所へと移動しながら、呼吸を合わせてにじり寄り
一気にランディング!
その瞬間、血はまた一気に逆流して
ウォーーーーッ、ヤッターーーーーッ!!!!!と、両膝ついて両手あげての大きな声。
(昔、戦争映画であったようなスタイルで、、、)
大きな声を張り上げても誰にも聞こえないのが、最上流域のまたいいところ。
息を整えて、陸にあがったキングをまじまじと見ると、お腹がぷっくり。
どうもクイーンないでたち。。。
サイズを測ると、87センチなグラマラス。
あらためてあたりを見まわすと、日はもうとっぷりと暮れかかっていてひっそりと、、、
初のヒューロン湖よりの恵みと河原でしばし放心状態で向き合い、感無量のひと時。
ドラマの舞台は、こんなトコロ ↓ (画像をグリグリと動かすと360度見えますよ~。)
(手前のプールから左の瀬へと遡ったキングを追いかけて、200メートルほど遡った場所でフッキング、その後沢を駆け下りて、なんとか右奥の朽ち木の手前でランディング。)
釣り上げてから、持って帰る状態にするまでには必要な時間があって、、、
興奮というか放心状態というか、なんか絡まった感情のような塊をほどきつつ、一息。
手を合わせて。(-人-)
八百万の神さんの存在を感じつつ感謝し、命をいただく時間。
ここ数年来のカナダ生活と野外活動の中で、八百万の神さんを心に宿した自らのルーツを確認できるようになってきたことはとても良いコト。
ナイフで腹をさくと、綺麗な朱色の筋子。。。
エラや血合いも川の水に流し、筋子は別に袋に入れて。
いつものように、素晴らしいフィールドに感謝。深々とおじぎしてお家へとかえる。。。
カナダはオンタリオ州、グレートレイクへの流入河川遥か彼方の最上流域で、
僕の秋ははじまります。
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